2006年07月07日

著作物の(二次的)利用〜その5.著作物の借用 (3)書籍・雑誌からの借用

 映像作品は例えば、放送なら「放送番組」という入れ物自体が著作物で、その中に詰まっている構成要素(素材)の一つ一つも著作物です。新聞は「新聞紙面」自体は編集著作物ですが、それを構成する個々の記事や写真も個々の著作物です。では、書籍はどうでしょう。
 書籍も映像作品や新聞のように「入れ物」に出版社の著作権があるのでしょうか。残念ながら放送番組や新聞社ほどはっきりと出版社に著作権がある、とはいえません。著者と出版者の間に著作権譲渡契約等の一定の契約があれば別ですが、原則として出版社は著作権者にはなれません。出版社は単に著作物を『出版物』として複製・頒布する権利を、著作者との契約によって得ているに過ぎないのです。簡単に言えば、出版社が出版する『出版物』とは、作者の書いた原稿を市場に置けるような形に整えているだけで、著作物ではないのです。つまり書籍だけが、外側の入れ物は著作物でないとされ、入れ物に入った中身だけが著作物になるわけです。
 著作権法においても、出版社には「出版権」という権利の記載がありますが、これも著作物を出版物として複製、頒布する権利であるということを述べるに過ぎません。また出版社は放送事業者のような著作隣接権者でもありませんので、その意味では一定の契約を交わさない限り書籍については著作権とはまったく無縁な存在となります。
 もちろん雑誌や全集のような「編集著作物」に該当するもので、編者が出版社の場合は出版社は新聞社同様「編集著作権」が認められます。雑誌のページをそのまま利用するとかですと、出版社の権利ですが、記事や写真のみを使用する場合には、個々の著作者の権利であり、出版社の権利は及びません。 
 注意しなければならないのは、この場合の「編集」というのは出版社の人が使う「編集者」とか「編集」とは異なる意味であることです(著作権法上の「編集」の意味については、先回参照)。出版社における「編集」というのは、作家の原稿をまとめたり、なおしたり、組み替えたり・・・という一連の作業のことをさすのだと思います。実はこの作業は大変重要で、担当者の力量によって作品事態が大きく変化することもあると思います。作品によっては編集担当者と作家の共同著作物になるのではないかという変化すらあるのではないでしょうか。けれど出版社(編集者)は大変忍耐強いというか、そのような権利主張を『作家に対して』行うということはあまりないようです(一部のコミックスを除きます)。また、出来上がった作品の二次的利用についての統括的交渉窓口になることもあまりないようです。いわゆる「出版契約書」には、複製、頒布して出版することについてのみ取り決められており、場合よっては「版型」(文庫とか単行本とか)まで細かく決めてありますから、本当に形を整えて世に送り出すと言うことだけを行っているといえるでしょう。その意味においては、出版社というのは作家を発掘し、育て、著作物を世に送り出す縁の下の力持ちなのでしょう。

 さて、そのような書籍なので、お分かりいただけると思いますが、小説などの「書籍」からの利用について出版社に許諾を求めても仕方ないということになります。出版社は原則的に著者との中継ぎ程度のことしか出来ません。出版協会が提供している出版契約を拝見すると、そのフォーマットに則った契約が標準であれば、出版社にある程度の権限が譲渡されているようですが、実際の契約締結率から察するに、出版社ひとりで回答を提示することは難しそうです。やはり出版社の担当者から著作者に確認してもらうということになりそうです。
 もちろん小説家や脚本家は、それぞれ著作権管理団体がありますので、そこの会員であれば、音楽の著作物同様申請だけで利用は可能です。ただ私の経験から申せば、諸所の事情もあり、音楽の著作物の利用ほど、簡単にことは進みません。
 もっとも、学校における書籍の利用はほとんど著作権法第35条、第36条、第38条でカバーされる利用が多いと、あまり問題にはならないと思われますが、逆に許諾を要するような利用に該当するときは要注意です。
 これまで3回にわたって借用される著作物の構成について説明いたしました。次回はそれらを実際に利用するときの注意点をもう少し掘り下げてみたいと思います。

(E)
posted by 著作権教育フォーラム at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/944142
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック