2006年06月20日

著作物の(二次的)利用〜その2.原著作物と二次的著作物

 著作物の利用と権利処理の前にまず、簡単に「二次的著作物」について簡単に説明してみます。
 著作物Aを使って、創作された別の著作物Bを「著作物(A)の二次的著作物」と言います。逐条講義によれば「既存の著作物を使わないで独自に新しく作り出した著作物・・を原著作物と呼べば、原著作物をベースに出来上がったもの・・が二次的著作物」と説明されています。
 二次的著作物は、大別すると原著作物の翻訳・編曲・変形・翻案の4種類の方法で生み出されます。翻訳は、言語Aから言語Bに訳すこと、編曲は曲をアレンジすること、変形は表現形式を変えること、そして翻案は、具体的には映画化、コミックスやゲームなどにすること、「小説を児童向けの読み物にリライトする行為」や「長い文章を短くダイジェストする行為」等、「内面形式は保ちながら外面形式を大幅に変更する」様なものがあげられます。
 例えば、英語原作「Harry Potter」を「ハリー・ポッター」として英語から日本語に翻訳することは、「Harry Potter」の二次的利用ですし、さらに映画にすることも「Harry Potter」を翻案した二次的利用(による映画化)ということになります。(著作権法では第2条第1項第11号に「二次的著作物」についての定義があります。)つまり、
 英語原作(=原著作物)⇒(翻訳)⇒日本語訳書(二次的著作物)
 英語原作(=原著作物)⇒(翻案)⇒映画(二次的著作物)
ということです。これがコミックスとかゲームとかになってもそれぞれ「二次的著作物」です。もしもコミックスが日本語訳書からの翻案であった場合は、コミックスは日本語訳書の二次的著作物(原作から見れば、三次的著作物)で、日本語訳書は英語原作の二次的著作物とどんどんつながっていきます。しかし英語原作はどこまで行っても原著作物なのです。そして元になった原著作物の権利は、二次的著作物が利用されるたびに同じように働くのです。(著作権法第27,28 条)
 つまり、『著作物』を利用しようと思ったら、その背後にも「著作物」が潜んでいないか確認し、利用にあたってはそれらの権利処理もしないといけないのです。映画を利用したいと思ったら原則としては、原作、脚本も権利処理対象となるわけです。

 原作がなく、書き下ろし脚本のドラマや映画というのも多いものです。後からノベライゼーションされるということもよくあります。これがかなり曲者です。出版物があるとそれが原作だと思ってしまう、特に活字の場合はその傾向が強いようです。あるとき、ビデオ化の担当者が原作の権利処理をしていないと青い顔できたことがあります。商品の発売日の1週間前くらいだったと思います。さすがに原作者にまったく知らせずに商品の販売は出来ません。(契約上の条件は後追いでも何とかなります)とにかく詳細を聞いてみると、「本屋にこれが平積みになっていた。このドラマは原作がないと聞いていたがちゃんと本があるじゃないか」ということなのです。ええ、ドラマが好評だったのでノベライズしたものです。脚本(≒原作)⇒(翻案)テレビドラマ化⇒(翻案)小説(ノベライゼーション=ドラマの二次的著作物)なんですが、出版物=原作本と思ったようです。この手の勘違いは非常に多いものです。原著作物が脚本やコミックスならまだいいのですが、最近はゲームが原著作物になる場合も多くなっています。ゲーム等は二次展開の産物と思ってしまうのですが、ま逆な開発がされることがあるというのは注意が必要です。
 この手の(善意の)勘違いは、権利のないところに権利を生み出してしまう可能性が高いので、権利処理方としては要チェックなのです。
 
 さて、商業目的の場合は全て権利処理の対象ですが、教育目的での利用においては、授業で利用(35条の範囲内)する著作物を翻訳、編曲、変形、翻案して利用することが認められています。例えば、外国語の散文を先生が訳して教材にする、歌謡曲をみんなで歌えるように合唱用にアレンジした楽譜を配る、難しい記事を生徒向けに書き直す等というのが、学校において多い使われ方ではないかと思います。これらの行為は許諾を必要としません。ただし「授業利用」からはずれると許諾がいることになります。「とても上手に出来たので、 ○○にしよう(HPに載せよう、合唱の様子をDVDにして配ろう等)」というときです。アレンジとかリライトしたという自分の行為(二次的著作物の創作行為)について、「自分で作ったんだからいいでしょ」的な気持ちになるようですが、元にした著作物(原作・原曲)があるということを忘れがちです。しかし、翻訳しても翻案しても元になった著作物がある限り、その著作物(原著作物)の権利はずっとついて回るのです。
 この点をきちんと理解していないと、映像作品とBGM、出版物と掲載写真の関係等「著作物の借用」のとき の、借用著作物の権利と全体の著作物の権利の関係が混乱してしまいます。
 逆に元になった著作物がなければ、当然、「背後の著作物」の権利は考える必要がありません。問題が起こるのは著作物Cに「インスパイア」されてある作品Dを生み出したときや、表現形式が似ている(と主張された)場合です。このあたりは商業利用の場合はものすごく注意を要するところですが、教育現場だとあまり関係ないともいえるでしょう。
 この「著作物の陰に隠れた別の著作物がある」という可能性について十分注意が必要であるということは、次回の「著作物の借用」というときの権利処理の時にご説明したいと思います。
(E)
posted by 著作権教育フォーラム at 11:35| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム
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