2006年06月08日

著作物の(二次的)利用〜その1.「あなたの常識は、あの人の常識ではない。」

 私の本業は「権利処理」です。現在は法務的な作業しかしていませんが、以前は主に映像の二次利用についての権利処理というかなり実務的でコアな権利処理を行っておりました。例えば、「映画Aの1シーンを5秒、放送番組Bに使用する」という場合や、「歌謡番組をDVDにして販売する」といったときに発生する類の権利処理です。また、その逆の「放送番組Cの1シーンを5秒間、D放送局の番組に使用許諾する」という放送局や新聞社等への映像素材の販売も扱っていました。
 劇場公開の映画や、テレビアニメの場合には、上映・放送の次の展開まで見越して幅広い権利の利用について契約することが多いです。劇場公開に併せて、ノベライズを出したり、ガイドブックを作ったり、パンフレットも販売すれば、グッズも販売する。公開後はDVDを発売し、時間を置いてレンタルを展開し、やがてテレビ放送される…展開に前後はあるでしょうけれどおおよそこんな感じで、1本の映画が利用されていきます。アニメの場合はさらに、キャラクターグッズという強力な展開があります。文具・玩具・衣類…。先日行われた東京アニメフェアでは「ガンダム」のゴルフバックが参考品として展示されていました。なるほど〜今や大きいお友達は接待でゴルフとか行くお年なのかと妙に納得しつつ、結構ほしいかもと思いました。
 これ以外の『映画の著作物』つまり放送番組、ゲーム等ですが、の二次展開というのは結構大変です。特に放送番組の場合は、放送に関する権利についてのみ契約を交わすことの方が圧倒的に多いのです。
 よく「どうせDVDやグッズの展開するんだったら最初からそういう権利についても契約しておけばいいじゃない」といわれます。確かに明らかに人気があって、DVDもキャラクターグッズも売れると確信があればいいのですが、大体は「放送する」と言うことが主目的ですから、それ以外の未知数の展開についてコストをかけたくない、ヒットすれば改めて交渉しようとなるわけです。テレビ番組の場合はスポンサーがあり、視聴率は気にするけれど制作費の回収自体は放送局や制作会社はあまり気にする必要がありません。劇場公開映画の場合は制作費の桁が違いますし、かつては大手映画製作者1社で制作し、興行していましたが、現在は大体複数人の出資者(よく「製作委員会」といわれます)がいるので、それぞれが自社の出資分の回収に積極的になるのです。
 今は二次展開をにらんで放送契約のときにDVD販売等についても契約するのかもしれませんが、テレビ番組のDVD(当時はVHSとか)が売れるなんて考えの無い頃でしたから、人気が出た番組やかつて反響の大きかった番組などについては放送終了後や、過去にさかのぼって番組の権利関係を突き止めて再権利処理してビデオを出す、ということになります。そういう権利処理が私の主な仕事でした。
 
 私が権利処理を初めて間もない頃に、「あなたの常識はその人の常識とは限らないと思って交渉することが大切だよ」と言われました。常識(コモンセンス)が一緒ではないとはなんと困ったことかと思いましたが、確かに私たちは交渉の過程や許諾状況について必ず書面を作成しますし、これは私たちの常識です。でも多分これは特殊な「常識」なのでしょう。同様にその是非はともかく「ちょっとインパクトのある映像表現にしよう」というのは制作者サイドの共通認識なのかもしれません。ある女優さんのプロフィールを紹介するシーンで「女王蜂」の映像をバックに使いたいと言われたときに、あまり上品な感じがしないなと思ったことがありますが、映像構成的には十二分にイメージを想起するという点では、制作現場のいう方がもっともなのかもしれません。
 立場が変われば、見解も理解も力点も違う。それでも「これ」=著作物を使いたいのはなぜか、どうすると公平に提供できるのか、お互いがハッピーになるポイントはどこか…これはいつも忘れずにいたいと思っています。

 さて、そんな権利処理をしていますと、当然教育関係の方からもお問い合わせをいただきます。放送番組の借用を依頼した方の多くが、借用できなかった体験をお持ちなのではないかと思います。
これからの数回は「権利処理」ということから、「著作物の利用」について私の経験をいくつかご紹介しつつ、なぜ「権利者はあんなことを言うのか」ということを考えていきたいと思います。

(E)
posted by 著作権教育フォーラム at 14:36| Comment(1) | TrackBack(0) | コラム
この記事へのコメント
かなり昔から撮り溜めした歌謡番組から懐かしい歌だけ部分的にカットして自分なりのDVDを作成しました。個人的使用であれば何も問題はないと考えていますが、最近自分の親が入っている老人施設で他人に見せたところ大変喜んでもらいました。特に戦後歌謡などは懐かしいようです。さて、ここで問題となるのは「歌謡番組をDVDにして販売する」を考えた場合に発生する類の権利処理です。仮に顧客のリクエストに応じて録画した歌謡曲を選びDVDに仕上げて販売するような場合の権利処理はどれほど複雑になりのでしょうか?コンテンツビジネスとなってしまうでしょうからそれなりに仕組みは存在していると考えられます。放送局は単に放送する権利、再放送する権利しかないとのことのようですから結局は複雑で不可能となってしましますか?NTTデータの関連会社でソリッドエクスチェンジ社2002年プレスリリースによれば番組販売なるビジネスがあるようにも思えます。http://www.nttdata.co.jp/release/2002/img/021900_01.gif
録画番組・歌番組の販売などの情報がありましたら教えてください。
Posted by さとう at 2007年03月21日 10:30
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