2006年06月02日

「悪」なのは「権利者団体」なのか

 これまで数回にわたって「権利者団体は悪なのか」という視点から権利者団体と利用者、そして利用者の中でも教育関係者という特化して視点から俯瞰してみました。要約すれば、
 ・ 多くの人は「権利者団体」というものの具体的イメージを持ち合わせない。
 ・ 「権利者団体」は自らを理解してもらおうという姿勢が欠如している。
 ・ 「権利者団体」は利用者の立場に立ったサービスを行っていない。
 ・ 利用者は「権利者団体」を敵視している。
 ・ 利用者は「権利者団体」にまっとうな抗議、意見具申を行わない。
 ・ 教育関係者と権利者団体は相互に誤認・誤解がある。
ということが大きな原因となり、結果として団体=悪的イメージが、どの切り口から見ても浸透しているようです。
 さらに(言葉が悪くて失礼ですが-)権利者面して市井の利用者(エンドユーザ)に対して、「権利行使」するという事例がだんだん多くなっているように思います。しかも、あたかも「権利者代理」のような振る舞いをする「輩」のなんと多いことか・・・。もちろんビジネスであれば許せます、お互いプロですし、例えば「営業部の作成したカタログに書の掛け軸が映っていた」時、「複製権侵害」かどうかも含めてコンプライアンスを法務部が指導する(してください)など、商売であれば当然にリスクヘッジします。しかし、市井では「わかりやすく、具体例にのっとり、正確に」著作物の利用及び著作権ついて教えてくれるところはほとんどありません。利用者が最初に思いつき、かつ最も「確実に回答」してくれるのは権利者団体くらいでしょう、但し回答はけして「正確」とはいえませんけれど・・・。(著作権法第38条第1項の解釈についてそれぞれ該当すると思われる権利者に問い合わせてみるとよくわかるでしょう。)
 『「著作権は著作(権)者の排他的独占的権利」なのだから、権利者が絶対である』という主張は当然起こるでしょう。しかしどんな法律にもそれぞれ目的があり、守らんとするものがあります。著作権法における目的とは、第1条記載の通り「もって文化の発展に寄与する」ことです。そのために著作者等の権利の保護を図るわけです。「著作権者を保護すると文化が発展する」ということではないのです。ですが、現状の「著作権」の扱いを見ると、どうも「何より大切な個人の財産権」という位置づけになっているように思います。このような意識が浸透してしまったのは、ひとつには教育手段が未熟であるということが挙げられるでしょう。そして、市井の理解の進まぬうちに、それまでも「権利」で商売していたところが「権利主張」というものを関係者以外に対して始め、さらに「権利者」の立場から教育を始めた…。だからこそ、著作権=財産権という部分のみがクローズアップされ、法本来の目的がかすんでしまっている・・・。

 「権利者団体は『悪』の団体か」と題してこれまでいろいろと述べてきましたが、総括するに、権利者団体が「悪」なのではなく、誰もきちんと教育しなかったということが最大の「悪」なのではないでしょうか。もちろん権利者団体は「悪」の要素もたくさん持っていますし、何故かその側面をアッピールしている言動も多々あります。突然身近になってしまった『著作権』とやらについて、誰もよく知らないうちからとりあえず広めなくちゃと啓蒙を始めたことについては間違いなく賞賛すべき行為です。しかし、理解しやすいからと「権利侵害」という部分から説明を始め、権利者的視点から財産的な部分を中心に教材を作成していったこと、これらが原因となり、現状の問題点を生み出してしまった事は否めません。その意味では、『教育』を統括する文部科学省や『著作権』を所管する文化庁が、その教育の最初を権利者団体に任せたという点においてかなりの責任があると思います。
 幸いなことにまっとうな見解を表明する人たちもふえています。今後はそういった人たちをどうやって増やしていくか、どうやって中立な啓蒙を進めていくか、ということを考える必要があるでしょう。その意味においても教育は非常に重要なのです。学校教育において著作権(知的財産)教育を推奨すること、そのために教師が学べる機会を設けることは大変重大な意味を持つのです。 そして、利用者の立場にも権利者の立場にも立って考えることが出来る、その上で著作権法とは何か、著作物とは何かということを考えることが出来る教育、それはけして貨幣経済の上になるものではないということに気づけるカリキュラムを考えてほしいと思うのです。そんな教育が進めば、少なくとも一元的に○○は「悪」等という感想は抱かなくなると思うのです。けして難しいことではなく、ただ著作権法第1条の意味を考えればいいのです、「…もって文化の発展に寄与することを目的とする」の意味するところを。

(E)
posted by 著作権教育フォーラム at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム
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