2006年05月23日

教師から見る権利者団体〜誤解と誤認

 途中で「読み聞かせのガイドライン」についてのコメントをはさみましたが、またこの話題に戻りたいと思います。

 さて、先回までに「普通の人の立場」「利用者の立場」という視点からそれぞれ「権利者団体」というものを俯瞰してみました。
 今回は、「教育現場/教師からみる権利者団体」というのはどのように映っているのかということを考えてみたいと思います。私は学校の教員ではないことをあらかじめお断りしておきます。ここに書くのは、私が一部の教師と対面インタビューをした折に抱いた感想です。もしこのコメントをお読みになった先生から他のご意見が頂戴できれば是非参考にしたいと思います。

 学校教育における著作物利用については、著作権法に記載の通り、第35条において先生や生徒が授業に利用する場合には著作物を複製することも、第36条において入試試験問題を作成することも著作権者に無許諾で出来ます。これは、教育が公益事業であることと、教育は他人の著作物を利用せずには成り立たないという実際的な部分とがあるからです。私はこれに加えて、教育は著作権法の究極的目的である「もって文化の発展に寄与する」ことを実現する手段であるからだとも思っています。とにかく、著作権法上「教育」は優遇された環境におかれているのです。
 多くの先生は著作権法第35条の規定をご存知です。条文までそらんじていいなくとも、「教育(学校の授業)では、著作物は自由に使える」という認識はほとんどの方がお持ちです。私がお会いした先生方は主に情報教育やご自分で教材を作成している先生方でしたので、さらに詳細にご存知でした。また、著作物の利用にあたっては場合により権利処理が必要であることも認識されているし、そのために権利者団体の存在もご存知です。実際に権利処理の経験のある先生もいらっしゃいます。但しこの場合最も利用され、最も認知されている団体はやはり音楽の著作物に関係するところです。実際には文芸作品の使用などもたくさんあるので、文芸の団体も認知されてしかるべきだと思うのですが・・・
 それでも大方の先生の「権利者団体」のイメージはけしてよくないんです。極端なことを言えば「学校教育での使用についてまでやかましく言う、まるで***(お好きな単語をお入れください)と同じ」とか、一企業と同じようなイメージを持っているんですね。ゆえに権利処理した場合には「許諾を"勝ち取った"」みたいな気持ちになる。やっぱり「悪者」感が漂っているのです。さらに、権利処理は面倒くさいしよくわからないし、それなら著作権のあるものは使わない方がよい、「著作権フリー」のものを利用しよう、という態度につながっていく。そしてますます、「権利者団体」との溝は深まっていく・・・
 これはおそらく「学校教育に必要なことになぜ許諾が要るんだ」「なぜ費用がかかるのか」という非常に素朴な疑問から来ている感情ではないかと思います。「なぜ自校の校歌を自校のホームページに載せるのに許諾がいるんだ、使用料が発生するんだ(この点は改善されていますが)」、「いい教材だからと思って他校の先生に配るのがどうしていけないんだ」、「この作家の文章はとてもいいので、教科書に掲載されている作品以外の作品を生徒に読ませたいと思ったのに、コピーして配るのはなぜだめなんですか」・・・正直「著作権法上はそこまでみとめられていないんです」と言う説明だけではなかなか納得できるものではないでしょう。「著作権者の権利を不当に害するから」といったって、そうですねと納得できますか?
 たぶん教師から見た権利者団体が「悪」に見えるのは、このような疑問に対して納得できる回答をしないからではないでしょうか。問い合わせをしても、杓子定規で現実に即してない説明をされ、自分たちの主張ばかりして教育現場の実情を理解していない、問い合わせをしたときにそんな対応をされたという先生が何人かおられました。多くの権利者団体の人は学校は侵害の温床だと信じて疑わないので、余計に構えて対応するのでしょう。権利処理を体験された先生の多くが「もう二度とやりたくない」という感想をもっていることも、おそらくいやな応対をされた経験があるからでしょう。
 私がお会いした先生方は、みな権利処理することは吝かではないし、「許諾を取る」というところから教師が勉強しなくてはならないと思っていらっしゃいました。でも手続きは煩雑だし、権利処理について知る機会もないし、結局いろいろな意味で高くつくので「利用しない」という結論になってしまうと嘆いておられました。
 以前に発表された「35条ガイドライン」についても、現場は期待していたと思います。インタビューの中で、「どこまでがよくてどうしたら違反なのかよくわからない」ので、手引きがほしいと言うことをききました。私たちのインタビューはこのガイドラインが出来る直前から直後にかけてでしたので、このガイドライン自体を先生方がどのように評価しているかは解りません。
ただ、このガイドラインの目的は35条の範囲を明確にすることでしたから、その範囲を超える場合にどうしたらいいかは当然記載していません。でも現場としては「じゃぁこのガイドラインに当てはまらなかったらどうしたらいいの?」と考えるでしょう。「許諾を取ってください」っていったって、その方法も書いてなければ問い合わせ方もよくわからない、権利者団体の一覧の掲載だけされている、そう考えるとちょっと不親切だなと思います。これじゃぁここに定められた以外の利用はするなと、暗に教育の萎縮を促しているのと同じ効果ではないでしょうか。
 教師が権利者団体にふれることは、あまり多くありません。制限規定の範囲内であれば必要ありませんし、人的時間的余裕のない教育現場においては許諾が要るようなことはよっぽどのことでない限りできないでしょう。逆に言えば、教育は最も優遇されているがゆえに、『優遇』が当たり前になり、「許諾を取るような特別な場合」にもかかわらず、現状を理解せずに許諾や手続きを要求する権利者団体は教育をないがしろにしている、教育現場を理解していないと、権利者団体について誤認しているのではないでしょうか。
 むしろ権利者団体は積極的に許諾のとり方や、権利処理の方法など実務的な情報の提供を行うべきではないでしょうか。そうすれば教師が権利者団体に触れる機会もでき、その中で誤解が少しずつ解消されていくのではないでしょうか。
 教育と著作権の問題は複雑で根の深いものです。次回は「権利者団体から見た教育現場」という視点で考えてみたいと思います。

(E)
posted by 著作権教育フォーラム at 13:34| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/708441
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック