2006年05月19日

「読み聞かせ」のガイドラインの矛盾点〜その5・完〜

4.『利用できる』著作権の環境を目指して
  「あまりのことに・・・」本件について4回にわたってコメントいたしましたが、その間いくつかのトラックバックやソーシャルブックマークでのコメントを頂きました。この場をお借りして御礼申し上げます。
 
 さて、以前にあるガイドラインが策定されたときにも思ったのですが、「ガイドライン」を作成する人たちの意識の中に「利用者」は存在しているのでしょうか。今回の『読み聞かせ』のガイドラインには利用者団体も協議に参加している旨が記載されコメントもありましたが、本当に納得してのことなのでしょうか。
 トラックバックいただいたブログでもご指摘がありましたが、このガイドラインがアップされてしばらく(といっても3日程度ですが)して、ガイドライン制作の趣旨書(1ページ目)のほかに、『あいさつ文』様のものが追加されています。素朴な疑問です、「今までどおりご利用できる」ならなぜ「ガイドライン」が必要なんでしょうか?問い合わせ対応であれば、個別具体例の列挙(FAQ)の整備の方がどれほど有効でしょう。結局権利を守るためにとりあえず「侵害」とか「許諾」とか言ってけん制しておけという態度にしか見えず、趣旨書も「あいさつ文」も空々しく聞こえてなりません。

 なぜ、権利者の最初の発言は権利誇示と「侵害されている」ということに終始するのでしょう。読者のいない作家、聞き手のいない作曲家でいたいのでしょうか。(経済的にも精神的にも)生活を脅かされるほど、本当に権利侵害されているのでしょうか。確かに著作権法は権利者の保護を図り、著作(権)者の排他的権利を規定するものです。だからこそ侵害の有無、諾否について著作(権)者の主観による裁量を大幅に認めているのです。
 利用する側とて教育だから、子供が対象だからといって、何もかもが許されるとは誰も思っていないでしょう。著作権法の制限規定においても権利を不当に害さない旨が但し書にうたわれています。
 しかし、今の権利者の主張というのはすべてを飛び越えて、とにかく許諾がないと権利侵害だということばかり主張しているように感じます。まるで「利用させてやるから」と言わんばかりに・・・。どんなに丁寧に記載しても「著作権法を越えてまで制限しません」という言葉はまさにその態度の表れではないでしょうか。
 ガイドラインというものは、それに照合することで、安心して著作物が利用できることを目的とすべきです。利用者と権利者は申請−許諾という関係があろうとも、対等の関係であるはずです。契約というのはそういうものです。権利者・権利者団体の方々はそのあたりにもう少し余裕を持っていただきたいものです。
 また、利用者も権利者の発言が不当であったり、わからないガイドラインが発表されたりしたときは、きちんと声明を出すべきです。もちろん世論の高まりを待つというのもひとつの手でしょう。でも多くの利用者は学校教育現場を含め余裕を持ったカリキュラムで年間活動を決めているわけではありません。時間がかかる、ややこしいことに関わっている暇がないのです。だからこそガイドラインはありがたいと誰もが大変期待して、皆失望感で一杯になって、やがて権利者に対して不当な感情を抱くようになるのでしょう。それでも本当にきちんと利用したいならば、利用者は利用者として意見書を出し、議論すべきだと思います。利用者はもっと自分たちの利用法に誇りを持って、権利者と対等であることを認識することが必要ではないでしょうか。

 ただここで、ひとつ大きな問題があります、権利者には「権利者団体」と言うのがあります。しかし利用者には「利用者団体」というのはないのです。利用者の意見をまとめ権利者に意見するほどに組織され力のある団体というのはとても少ないのです。出来れば小さな利用者の団体が集まって共同声明を発表できる、そんなフウに協力していければ、一方的なガイドラインになることもないし、真の意味で「権利者と利用者が手を携える」ことが出来るでしょう。
 権利者団体に対抗できる「利用者団体」というものが今現在未整備であるなら、今ある利用者の団体はそれぞれの目的と必要性認識して、連帯し、提案をしていかなければ何も状況は変わらないのです。文句ばかり言っても具体的な要求がなければ、ただの愚痴にしかなりません。そして利用者が個人や小さな団体として権利者団体に意見しても、あまり相手にされないと言う悲しい現実もあります。
 そのような現状にあって、私たちは利用者と強者になりがちな権利者との間の架け橋としてお手伝いをしていきたいと思っています。
 ガイドラインが利用者にとっても有益であり、必要なものである以上、きちんとしたものができるように、活動していきたいと思っています。

(E)
posted by 著作権教育フォーラム at 14:34| Comment(0) | TrackBack(2) | コラム
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