2006年05月17日

「読み聞かせ」のガイドラインの矛盾点〜その3〜

3.解りづらい点、問題点(その1)
 先回とかぶる部分がありますが、「ガイドライン」としていささか欠けているのではないかと思われる部分があるのではないかと思います。

 先回「やむを得ない改変」「著作権等管理事業法における応諾義務」についてふれていないと書きました。使用できる事例の具体例もないと書きました。もう一つガイドラインとしてあまり良くないと思われるのは「お話会・読み聞かせ団体等に〜」のページのうち「C.「著作権の制限」規定により例外的に無許諾で利用できるもの(お話会等に関係するもののみ)」に、著作権法制限規定を列挙したということです。
 第37条(点字による複製等)は関係ないと思われますし、そもそも「お話会」なんですから第30条(私的使用のための複製)もかえって混乱させるだけなのではないでしょうか。それとも私的な「お話会」が念頭にあるのでしょうか。それでも「私的利用」なんだからいちいち書かなくても当然に著作権は制限されるのだし、大きなお世話という気もするのですが…。このガイドラインを参考にする人は著作権法を全く知らない人だということが前提であるならば、もうちょっと詳しく記述しないと理解できないでしょうし、ある程度知っている人なら、必要なこと以外はもう少し整理して記述したほうがよいと思います。第32条(引用)にしても「お話会」のガイドラインで、引用の目的上正当な範囲として「報道、批評、研究」と著作権法そのまま記載して何か役に立つ情報となるのでしょうか。「読み聞かせ」はどう考えても、報道にも批評にも研究にも該当しない事例が圧倒的なのではないでしょうか。であれば、この1文を読んだ人は「そうか、読み聞かせは報道でも批評でも研究でもないから「引用」とかも出来ないんだぁ」と思うのではないかと危惧します。
 ガイドライン作成の意図があくまでも「お話会・読み聞かせによる著作物利用」に関するものである以上、それに付随した情報で作成すべきではないかと思います。
 
 このガイドラインの問題はそもそも作成時における以下のような問題から生じているのではないかと思われます。
1. 想定されるガイドライン利用者像が定まっていない点。
  著作権法の知識の有無、年齢(中学生のボランティアが保育園で読み聞かせをやろうと思ってもこれじゃわかりません)等。
2. ガイドライン策定の目的。作家の権利保護なのか、出版社の権利(何の権利かわかりません)保護なのか、利用促進なのか、利用規制なのか、単なる「アピール」なのか
3.他の法律との整合性の調整不足。
  先にガイドラインの法律的取り扱いにも問題があると述べましたが、さらに、指摘しますと、このガイドラインに基いて申請書を提出するのが個人である場合、個人情報の扱いについて一切記載がないと言うことがあげられます。

 あらかじめこのような点をしっかり定めずに、ただただ「読み聞かせってはやってるけど、あれって著作権上どうなってるんですか」や「挿絵をコピーされたり、拡大したりして使うのはあんまり好ましく思えないんですよね」と言うような意見や感想から、ガイドラインでも作りましょうかと言う流れになってしまったのではないかと思うのです。ガイドラインを作成しようとする試みは大変評価できます。しかしきちんとした調査や条件の実効性を詳細に検討せずに、単に著作権法の抜粋のような形になってしまったことは残念でなりません。
 それにしても、これだけ問題点が指摘できるガイドラインを公開してしまって、利用者は果たして信用していいものかとかえって不安にならないでしょうか?

 次回は利用者の視点からこのガイドラインの問題点について述べたいと思います。

(E)
posted by 著作権教育フォーラム at 13:47| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム
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