2008年05月18日

「知的財産推進計画2007」の見直しに関する意見募集に対する意見

 なかなか更新が、滞っておりまして、大変失礼いたしました。
 さて、本年度も、知的財産戦略本部が行った「知的財産推進計画2007」の見直しに関する意見募集に対して次のような意見を行いました。
 遅ればせながら、ご報告したいと思います。
第3章 知的財産の活用
「W.知的財産を活用して地域を振興する」における
「1.地域の知的財産戦略を推進する」の
(2)地方公共団体の知的財産戦略を推進する
(3)地域資源の活用を支援する
及び、
「2.地域の知的財産人材を育成する」についての提言。

 後述する「第5章 人材の育成と国民意識の向上」における提言にも関係するが、経済活動、企業支援を中心とする「知的財産推進計画」であるが、知財の根幹はそれを創造する人材にあるのでり、その人材の育成、そのための初等中等教育における教育の充実、そして、利用者だけでなく創造者としても重要な位置を占めるようになった一般市民への啓蒙が、最も大切であることを最初に述べる。その上で、個々の提言をする。

「1.地域の知的財産戦略を推進する」
1.(2)について。
 同項目の「A意欲的な取組を進める地方公共団体に対する支援を強化する」において、地方行政型CATV局(以下「地方CATV」という。)を支援対象とし、別途映像コンテンツのアーカイブス化や、映像素材の販売等映像の二次的利用についての政策を検討すること、並びにそのような行為が可能であることの啓蒙をはかること、さらに、地方CATV職員を地域の知財戦略支援人材として位置づけ、研修等を積極的に行うことを提言する。

2.(3)について。
 地域における知的財産について、現状では、特許等産学連携に関わる人材、ベンチャー企業等経済活動等に主力をおいた政策が提言されているが、地域にはそれ以外にも様々な発展の可能性があることを指摘したい。例えば、伝統文化や伝承、日々の暮らしの様子など、どれもが特色ある「知的財産」の一つであることを認識し、それらの持つ価値の有効な利用を考える必要があると考える。
 その際、その中心として有効に機能すると思われるのが、地方CATVであると考える。
 地方CATVには、NHKや民放各局の放送番組を提供するだけでなく、その地域に根ざした番組(以下「地域番組」という。)を多く製作し、放映している。地域番組は、決してプロの製作した商業番組と同様のクオリティではないが、中央のTV番組にはない特色ある番組であり、日々の小さな出来事が丁寧に綴られている。それらは、その土地その土地に特化した特色ある映像素材の宝庫として、評価することができる。
 このような文化財についても地域の知的財産戦略の一端に加える必要を提言する。
 地方CATVに眠る映像資料は、もちろんNHKのそれに比べるべくもないが、しかし地域の特色ある伝統文化の貴重な保存者であることを忘れてはならない。そして、限られた財源と人材でこつこつと蓄積されてきた貴重な資源が霧散しないよう、早急な支援を提言する。

第5章 人材の育成と国民意識の向上
「5.国民の知的財産意識を向上させる」における、
(1)学校における知的財産教育を推進する
(2)地域における知的財産教育を推進する
(5)学校と地域産業界の連携による知的財産人材育成を推進する
(7)知的財産に関する国民への啓発活動を強化する についての提言。

引き続き平成20年度においても、著作権教育に限定して、人材の育成と国民意識の向上についての提言を行う。
 知的財産権は、大きく特許権などの産業財産権と著作権に分類できる。そして、著作権はその本質として、産業発展を目的とはしていない。それにもかかわらず、現在、著作権制度については、産業的側面からばかり議論されているように思われる。ここでは「リスペクト」という文化的尊敬心すら、産業的枠組みの中で議論されていまっているのである。
 今一度、著作権法が何を保護すべき法律であったか、現代社会が何故、経済至上主義的に著作権法を検討しているのかについて、改めて考えるべきである。著作権は文化の一翼であり、それはすなわち、万人にかかわることであって、産業財産権のように、産業経済に直接結びつくものだけではない。そのことを再度認識し、経済活動として著作権を扱う者にも、改めて著作権とは何であるか、それは単に金の卵を産む鶏だけではなく、人類の文化活動に綿々と受け継がれてきたものである事を、学ぶ機会を提供すべきであると考える。著作物を創造する者にも、著作物で利益を生む者にも、著作物を利用する者にも、正しい著作権の啓蒙が必要であると考える。
国民の知的財産意識の向上については、学校における知的財産教育をきちんと行うことを第一義とし、社会全体の知識の底上げが重要であることを提言するものである。

1.(1) 学校における知的財産教育を推進するについて
 教育は一朝一夕に成されるものではない。従って、初等教育からの正しい知識の提供は、その後の知識形成に重要な位置を占める。
 「知財教育」は、無体物の利用を扱う。また著作権にあっては、社会活動と密接に結びついており、社会活動の枠組みの中で学ぶ必要がある。そこで、
昨年度同様の提言ではあるが、就学年に応じて、各学年各教科の中に潜む知財問題や、著作権については、道徳、社会規範等一般社会常識と絡めて、知的財産権の基礎的部分を体得させるような学習指導要領を検討すべきであると考える。著作権を含む「知財教育」として単元化するのは、一定の理解力が付く高校生程度になって初めて法条文を含む具体的制度についての教育を行う等、学習者の程度に応じた柔軟なカリキュラムの策定が必要であると考える。

2.(2)地域における知的財産教育を推進するについて
 地域の工作教室、発明教室等の課外活動は、確かに「自分の創造性」の発露として有益である。しかし、オリジナリティを尊重する意識を自己や他人の権利を尊重する意識は、著作権教育にこそ必要なものである。工作や発明等、鉱業財産権に関わることは、登録等要件があるため、容易に自他を区別できるが、著作物は創作した瞬間から権利が発生するため、他人のものを利用するという意識のないまま、利用されている場合が多い。非常に秀逸なパロディであっても、原著作物の二次的利用なのであり、パロディの創作者に原著作物の二次的利用という意識があるかということが重要となるのである。
 その意味において工作・発明教室だけでなく、著作物を作成する課外活動(例えば、映像作品を作成し、市販CDから楽曲を利用させ、著作物利用申請をさせ、許諾を得る等)の活動をもっと普及させるべきであると提言する。同時に、権利者団体への教育活動への積極的な支援等を期待する。

3.(5) 学校と地域産業界の連携による知的財産人材育成を推進するについて
現在、著作物の利用については、経済的側面からの著作物流通の整備は行われつつあるが、商業ベースの利用者へ利便性が図られるばかりで、一般市民、教育関係者に対する配慮が少ない。知的財産といっても、著作権と産業財産権は明確に区別されるべきであり、文化的意義を軽視してはならない。国民全体の意識の向上のためには、産業面だけでなく、最終的に著作物を手にし、楽しむ市民、生徒、児童等が、著作権を障害と感じることなく、著作物を自由に利用し、また自らも著作者として発信できるような環境の整備が必要である。市民の積極的な著作物利用の推進を図ることは、著作権意識についてより身近に考える大きな契機となると考える。

4.(7)知的財産に関する国民への啓発活動を強化するについて
 前述した、学校教育における工作教室等の課外活動的なものを、広く一般市民へも行うべきであると考える。特に地方CATVには、「ビデオレター」等一般市民から広く映像作品を応募させ、それを地域番組として活用している。その際に著作権の問題は大きく関わってくるのである。このような現在広く行われている個々人の活動について、具体的な事例に則した知的財産に関する啓蒙活動を幅広く行うことを提言する。
 また、昨年に引き続き、著作権法の原則である「著作権者の許諾を得る」ことについて、より簡単で早い申請・契約スキームの開発の必要性について提言する。このスキームの開発はシステムの構築ということではなく、既存のシステムを利用しながら、利用者-権利者間での交渉の一環として検討されるべきものであると考える。現在進められている、民間の契約による問題解決スキームは、業として著作物を利用する者を対象としている場合が多く、一般的な利用者(個人)が、そのスキームを応用するのは、かなり難しい。それは、「契約」ということについての教育がこれまであまり成されていないと言うことにも起因すると考える。この点は、学校教育等における対応も考慮されるべきであろう。
 このように、個々人-団体(あるいは権利者本人)間の契約交渉の限界を解消するために、両者の仲介役となり、あるいは広く著作権についての相談できる機関の早急な設立を提言したい。国民全体の知的財産意識の向上が図れれば、この様な機関は特に必要ないことは、昨年も述べたが、やはり現状において、権利処理について網羅的に指導し、相談を受ける機関は存在しておらず、それがために利用者はいざ権利処理をしようにも、どうしたらよいか判らない手探りの状態が続いている。直接的な教育も大切であるが、その教育を支える仕組みも考慮する必要がある。
                          以上


posted by 著作権教育フォーラム at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 提言
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