2006年10月06日

ネット配信への期待 その2

 前回「音楽著作物」と「音楽を利用する」ということについて、簡単に申しました。今回はちょっと特殊な「放送局と音楽」について、ご説明します。
 放送というのは著作権法ではちょっと特殊な扱いを受けます。まず、著作権法に規定される放送というのは、放送は送信形態の一つで、「公衆」にむけて、同一内容を同時受信するという目的をもってなされる送信を指します。そして無線の場合です。ケーブルテレビなどは無線ではなくて、有線ですので「有線放送」となります。「公衆」に「同一内容」を「同時受信」するという送信が「放送」です。この「放送」を生業としているのが「放送事業者」、いわゆる放送局です。
 放送局はニュースのオープニングや、番組BGM等様々、非常に沢山の楽曲を使用します。その場合音源は大体CDということになります。もちろんスタジオで演奏し、録音する場合もありますが、ほとんどは市販CDです。使用の度に著作者、著作隣接権者に交渉し、許諾を得るという作業をしていては大変です。申請書を出すだけでも大変です。
そこで権利者団体が管理する楽曲については、権利者団体(JASRACですが)が昨年度の音楽著作物の使用実績を下に、次の年の音楽著作物利用量を想定し1年分の使用契約(ブランケット契約とわれます)を、放送事業者と締結します。権利者団体の応諾義務のもうちょっと大きいバージョンといえます。
 では実演家が演奏し、レコード製作者が固定した「CD」についてはどうでしょうか。放送以外、例えばDVDを作成する場合は音源使用についてレコード製作者の許諾が必要です。放送はといえば、実演家の許諾を得て録音物に収録されていた番組を放送する場合には、実演家の放送権は働かないとされていますし、市販されているCD(著作権法では商業用レコードといいます)を使用して放送する場合には、許諾ではなくて、使用についての支払義務が課されるだけになります。
 つまり、著作者の権利処理も著作隣接権者の権利処理も、使用料を払うだけでよいということになります(もちろん使用報告は必要です)。
 以上のことから、放送というのは著作権法上かなり優遇された地位にいるということがお分かりになると思います。
 ところが、これが一旦放送から、ネット配信になるとどうなるか。ネット配信は、同一内容を同時受信するだけでなく、異時受信も可能です。つまり、ネット配信は著作権法規定する「放送」ではなくなるわけです。放送でないのですから、先ほどの放送の権利処理特典は通用しません。つまり、普通の利用者と同じように、レコード会社と交渉して…となるわけです。それを放送と同じタイミング、あるいはこれ迄のものも含めて用意する…それは時間的物理的に不可能に近い作業です。なぜなら、今まで「放送」ということで、あらゆるCDを、それこそリリース直後の新曲から、アイドルの曲から使い放題使い、しかも1番組あたりの使用楽曲数も相当数に及ぶ…という番組を、一つ一つ元のCDを特定し、レコード会社と交渉し、実演家と・・・。放送番組のDVD化のとき泣く泣く楽曲の差し替えをするDVD制作担当者の気持ちを追体験することになるのです。
 この点が放送が優遇されているがゆえに、「放送」から離れて瞬間に巨大な壁としてそびえ立つ「著作権の問題」として議論されている点でした。これが今回、放送と同じ待遇をしてもよいという、いわば大英断をしたのです。実際に稼動すれば使用料配分など課題は山積だと予想されます。しかし権利者が利用者(放送局は、ある意味最大の著作物利用者です)の事情に近づいたという点においては評価できるのではないかと思います。
 同様な利用者への歩み寄りというものを、教育現場にも応用できないものでしょうか。教育というのも著作権法上かなり特殊というか、質は違えど優遇されています。著作権法の例外規定に該当するという点において、似たような環境にあるのかもしれません。
 もしもこのような一元処理の仕組みが学校教育にも応用されたら、もっと学校での著作物利用が増えるのではないかとも期待します。
 次回はこの「歩み寄り」から学校教育現場での著作物利用について、教育現場はどのように考えるべきかと述べたいと思います。

(E)

posted by 著作権教育フォーラム at 00:56| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/1401337
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック