2007年02月28日

著作権を法律として教えることの難しさ

 ある学校で次のような設問が宿題でだされたそうです。
 「インターネット上のある個人運営のサイトには、いく人もの有名な作曲家や演奏家の曲が多数置かれていて、無料でダウンロードできるようになっていた。この中から自分の好きな曲をダウンロードして、携帯プレーヤーに録音し、学校の行き帰りなどで聞いている。この行為は法律上許されるか。」
 この設問を、私どものブログをみて解答された生徒さんが間違われたそうです。
 先生の解答はこうです。
 「許されません。前問と比べるとすぐにわかると思いますが、そのような個人サイトが著作権者にお金を払っているということはなく、そのサイトの運営者が著作権者の複製権や公衆送信権を侵害しています。そのような違法サイトからダウンロードすることは、例えて言うと、盗んだ品物を泥棒(盗みをはたらいた本人)から譲り受けるようなものですから、たとえ私的使用目的であっても許されません。」
 まずこの設問では、個人運営のサイト無料で運営している=違法と評価させていますが、このことは必然ではありません。レコード原盤権との関係でいえば、事実違法サイトが多いことは否定できませんが、個人サイトで無料の者が直ちに違法性とであるという事実認定判断をさせることには疑問が残ります。もちろん、学校の課題は授業での解説とも関連するので、違法サイトが多い現状の説明などがあったような場合には、前提とする余地もあるかもしれませんが、決して当然の前提ではないことに注意が必要です。

 次に、設問の「法律上許されるか?」という点です。
 この回答としては、「(仮に違法サイトからであっても)私的使用複製かつ個人視聴」であれば、適法というのが現状でしょう。だからこそ、法律を改正しようという動きがあって、違法なサイトからの複製は違法と規定しようという動きがあるのです。http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/020/06122108/003.htm の議論は「現在の制度が適法である」ことを前提とした制度改正の議論でしょう。
 もちろん法律的な解釈では争いがあるところなので、どっちが正しいということはできませんが、アップロード側の行為は、無断で行えば「引用」などのごくごく限られた場合にのみ適法であって原則違法であるといえそうですが、ダウンロード側の行為についてはテストの解答として「違法」と評価するのは難しいでしょう。
もちろん法律上許されるから何をやってもいいか、というとそうではなく、「違法サイトからダウンロードが好ましいか」と言えば好ましくはないように思います。しかし、「法律上」という問いである以上、「適法」と解するのが一般的な見解だと思います。少なくとも違法と解することには違和感を感じます。
 情報「モラル」として「好ましくない」というのは別論、「法律論」として「違法」という点には立ち入るべきではないように考えます。

 この生徒さんは、きっと混乱してしまったことでしょう。設問自体の不適切さは否定できません。インターネット上の情報に対する信憑性判断が重要であることは正にそうでしょうが、先生のおっしゃることが直ちに正しいということもありませんし、本設問では法律上違法と断言することはできません。よくないことだろうけど、本当に「法律上いけないこと」なのか?著作権を法律として教えることは非常に難しいことです。違法でなくても「モラルとして問題」といえる、ここに情報モラル教育の意義があるように思います。

(T)

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※なお、本稿執筆者の私見では、「法律上」とする本設問の解答は「適法」であり、またそれは通説であると理解しています。
参考:http://ume-law.cocolog-nifty.com/blog/2006/03/post_870b.html

※設問、解答は、ttp://homepage3.nifty.com/ri8a-iskw/johoB/k12a.htm より引用。
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2007年02月06日

何が適法で、何が違法なのか

 まずは、あなたの着うた(R)は違法ですか?──中学生は64%が利用という記事をご覧ください。

 生徒さんの携帯の使い方を気にしてらっしゃる先生方も少なくないかと思います。もし違法サイトの利用自体が違法であれば、万引きを防止するのと同様の対処する必要があるように思います。しかし、現在の著作権法では、適法なサイト違法サイトであれ、私的複製(ダウンロード)であれば、適法です。もちろん、そのようなサイトを利用することは、モラルの問題が生じえますが、道徳として考えることを除き、単に違法か適法かといえば、適法ということになります。

 さて、この記事には、知的財産概念に対する正しい理解を促すという観点から、問題のある表現が散見されます。
 一つは、「無料で楽曲をダウンロードする行為は、当然ながら違法…いや、正確にはダウンロード自体が違法行為なのではない(サービスやプロモーション目的で、権利者自ら無料でダウンロード・データを開放することはありますね♪)。」という表現です。
 さきほども説明しましたように、違法サイトであれ、適法なサイトであれ、私的複製であれば適法です。無料かどうかも関係ありません。したがって、「無料で楽曲をダウンロードする行為は、当然ながら違法」というのは誤りです。
 もちろん、この記事では続けて、「正確にはダウンロード自体が違法行為なのではない」とされています。しかし、その後の()内では、「サービスやプロモーション目的で、権利者自ら無料でダウンロード・データを開放することはありますね♪」」とし、無料サイトでも適法サイトであることが指摘されています。繰り返しますが、ダウンロード(私的複製)は、適法サイトからであれ、違法サイトからであれ適法です。この記述は、無料だからといって違法サイトとは限らないことの説明にはなっていますが、違法サイトからのダウンロードが適法であることの説明にはなっていません。適法サイトであれ、違法サイトであれ、ダウンロードする者には関係なく、現状適法行為であるという点からは問題のある表現ということになります。
 著作権法上問題は、サイト開設者にあります。無料配信であれ、有料配信であれ、許諾を得ない配信(公衆送信)は違法となります。有料サイトであっても、許諾を得なければ違法ということになります。この点への誤解も生みやすい表現ではないかとも思います。

 また、タイトルの「あなたの着うた(R)は違法ですか?」も違和感があります。「着うた(R)」は登録商標であり、正式な「着うた(R)」サービスであれば、権利処理もなされているといっていいように思います。だからこそ、この記事も「本当にアーティストを応援しているのならば、ちゃんと着うた(R)なり着うたフル(R)なりを購入しよう」としているのではないでしょうか。しかし、このタイトルの意味は、「着うた(R)」=音楽配信サイトの意味で使われています。ある種一般名詞化されて使われている部分もあると思いますが、それならタイトルでの(R)は不要でしょう。

 著作権、商標権を含む知的財産概念はわかりづらいものですし、正確な知識をこのような記事で提供するのは不可能でしょう。しかし、わかりづらいからこそ、せめて誤解をうむ表現は慎むべきように思います。ここでいうと、無料・有料は配信サイトの違法性とは必ずしもリンクしません。過度にそのことを強調することは避けるべきように思います。
 正しい法理解という視点からになりましたが、法教育的観点からも、正確な情報配信を望みたいものです。
 
(T)
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