2006年11月12日

「禁止事項の学習から、利用方法の学習への転換」(その2.内容)

 著作権教育に於いて体験型学習イベントというのは、恐らく全国初の試みです。このイベントにはいくつもの実験的要素を含んでいます。これまでの座学中心の講義から実際の制作過程を体験することへ、禁止事項の学習から、「どうすればつかえるのか」という利用するための方法の学習へ、そして、「権利処理」を行うこと、「権利処理」を行うための集中権利処理システムの構築などです。イベント開催に当たっては、ターゲットに併せてパイロット授業を行いました。05年は生徒中心でしたので、「権利処理を行う」ということを前提とした講義構成について、06年は先生が権利処理を行えるようにということを新たな目標としましたので、教員向けの講演をまず行い、そこでの反応や意見を参考にイベントカリキュラムを構築しました。
 これまでの多くの著作権教育についての研究や、情報モラルの研究は、教師あるいは生徒に対し違法か適法かを問い、著作権についての知識の有無を検証するというものでした。つまり、この利用法は適法か違法か違法の確認であり、「では実際に使う際にはどうしたらよいか」ということについては触れない、触れていても「個々の事例により権利者団体に問い合わせること」という事のみが記述されているだけです。そこでこのイベントでは、一歩踏み込んで、実際に権利処理をするということ、そのためにはどういう情報が必要でどのような知識が必要かということに学習の焦点を合わせました。
 このイベントは最終的にどの学校現場でも利用出来る様な汎用性を持った教材、カリキュラムの開発、そして学校での著作物利用を促進するためのサポート機関の設立ということを考えています。この様なことを念頭に置いてのイベントですので、参加者の意識調査が非常に重要になります。パイロット授業をはじめ、ワークショップ終了時、ワークショップの成果発表の場であるフェア終了時等、節目節目でアンケートを行いました。
 分析の結果、次のようなことが明らかになりました。なお、このイベントは「権利処理を通じて著作権を学ぶ」ということが主眼ですので、著作権の制限条項(例えば第35条)には該当しない状況になっています。

(1)著作権に対する意識
 本イベント及び事前のパイロット授業を通じ、単に権利や著作物について教えても、実際には知識として活用できていないということがはっきりしてきました。
 友人の朗読する作文や、ダンスシーンの音楽(数秒程度)が著作物であることは、通常の著作権学習でも説明されることなのですが、これらが著作物であり、権利処理をしなければならないということに驚いたという感想が複数見受けられました。
 著作権の知識が、具体的な例示、実際に他者の著作物を使用するという実践的過程を通じて、初めて必要な知識として獲得されるということを表しているのではないかと思います。

(2) 著作者としての意識の向上
 アンケート項目から自ら制作することでクリエーターの権利に目覚め、他者の権利侵害だけでなく、自らの権利を守るという意識の向上が伺えました。特に、個人分析でみると、クリエーターとしての意識は、作品の完成度の高いグループに強い傾向がありました。優れた作品を完成させることは自らの作品に対する権利意識を目覚めさせることにも有効であると考えられます。そしてこのことは、他者の権利侵害を防ぐことにもつながるものと考えます。

(3) 著作権及び権利処理学習の問題点
 権利処理、映像製作を通じて著作権についてはほぼ理解したとしながらも、アンケートでは全員が著作隣接権について解らなかったというショックな事実が判明しました。例えば、講義でレコード会社の権利と説明し、CD音源からの楽曲使用の原盤使用申請書を作成しても、JASRACとの違いがわからず誰の何の権利か理解できていないということです。楽曲使用はもっとも利用可能性が高いと考えられるため、この点の指導については改善の必要があると言うことがはっきりと解ります。

 この様な結果がイベントから見えてきました。次回は今後の著作権教育のあり方について思うところを述べてみたいと思います。

(E)

posted by 著作権教育フォーラム at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | コラム